Something Poetical Private

私的で詩的な映画の感想を書いています。

パリ、恋人たちの影

さて、どうしたものかね。

総合すると、「退屈な映画だな」って思ったわけなんだけど、いいものには理由がないことは数あれど悪いものには何かしら理由があると信じている僕としては、この映画の何がつまらなくさせてるのか正直よくわからないのが気になっている。

たぶん退屈だったのは時間の制約からかたまに聞こえてきたやたら丁寧に説明してくれる「ナレーション」とか、終始重苦しい雰囲気だったわりにはありきたりなストーリー、とかだったんだと思う。

なんかのりきれなくて、入り込めなくて退屈だなと感じていた。

一方で、この映画は役者の演技は抜群だったように思う。フランス語だけど、目をつむっていても*1感情がわかり、アクションなどほとんどない映画だけれどとてもひとつひとつの挙動、少しずつ少しずつ離れていく心、そういうものが演技を通して伝わってきた。

物語がシンプルなだけに、演技もシンプルだ。そして一般に、シンプルなものほど難しい。きらびやかな装飾は神の宿る「細部」を見えにくくさせる。一方この映画はどこまでも普通の物語で、シンプルで、どこにもごまかせる場所がない。おまけに白黒だ。

画で魅せることはせず、ふたりの男女の静かな、それでいて退屈でありきたりな日常をまっすぐに映像化したのは、もしかするとちょっと「面白い」かもしれない。ただ見ている間は退屈なのだ。

自らの罪からは目を背けたくなり、他者の罪は糾弾したくなる。人は狡い。

そんなシンプルで当たり前な人間の姿を、白黒のパリの世界から、パンをかじる男の演技に惚れ惚れしつつ見る映画だった。演技はいいが、脚本が僕好みではないなぁ。

*1:つむってないけど。