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Something Poetical Private

私的で詩的な映画の感想を書いています。

こんなに面白いならもう少し面白そうに予告してくれない? SCOOP!

邦画 コメディ

最近もう面倒になってきたから全ての記事をネタバレありということにしようかって気持ちになってきた。

Introduction

アミューズ、頼むからこの映画に妥協を許すんじゃない。一生恨むぞ。

この映画は凄い。予告見てたはずなんだけどすごくいい意味で裏切ってくる。笑いあり、なぜか涙あり、なぜかカーアクションもあり、さらには銃撃もあり社会風刺ありとなんでもありのエンタテインメント。クドい、ゲスい、エロい、サイテーサイアクな娯楽映画なのに、見終わったあと「いい映画だったな……」なんて錯覚してしまう不思議な魅力を持っているこの映画。脚本・監督大根仁の辣腕、主演福山雅治の大看板、主演を引き立てた助演の活躍、クドいほどに場面を煽ってくる音楽。いずれの要素もかなり評価が高い。

この映画を見る前に僕らが知っていたことは、実はすごく表面的な入り口に過ぎない。

俺達の仕事はゴキブリのその以下のドブネズミ以下なんだよ

と CM で言っていた。でもそのあとこう続く、

じゃあさ、なんでみんなそんなもん見たがんだよ?

と。予告でこの映画の入り口だけは見えている。でもあと一歩、そのさきの一歩を踏み込んでみると、この映画はずっと深い。エロさゲスさをカムフラージュにしているけれどずっと奥が深い作品。

2016年は邦画好調っていう主張を「テラフォーマーズ」を言い訳に否定し続けてきたけど、否定しきれないかもしれないな……

scoop-movie.jp

興行収入的には苦戦しているようだが、本当に面白かったのでこの記事でひとりでも見に行く人が増えることを僭越ながら祈っている。

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Staff & Cast

撮ったらすぐ逃げんだぞ〜

クドい映画にクドいまえがきは要らないだろということでさっさと書いていきましょう。脚本・監督は大根仁。名前は知っているんですが作品を見るのは実は初めて。代表作は「モテキ」や「バクマン。」かな。悪い評判は聞かない監督だったので普通に期待はしていた。

音楽は川辺ヒロシって誰やねん……と思ってぐぐったところ、主題歌を手がけたTOKYO No.1 SOUL SETのメンバーの様子。今回音楽にはあんまり「福山雅治色」は出ておらず、個人的にはそれも好印象*1。音楽については後でまた少し書くつもりだが、非常に好印象。

製作はテレビ朝日アミューズ。あらかじめ言っておくが私はアミューズが嫌いだ。僕にはドラマ「ガリレオ」でアミューズのゴリ押し(要出典)で主演福山雅治吉高由里子にした(要出典)のを永遠に許さない*2という恨みがあるので。ちなみにテレビ朝日には特に恨みも言いたいことも感情もない。

根拠のない偏見を発信してしまった……この辺にしておいてキャスト紹介を。

主演の、元スターカメラマンで現在は中年パパラッチ、風俗好きでケンカが弱い、カメラ以外に何の取り柄もない男、都城静(みやこのじょうしずか)役は福山雅治。これは完全にハマり役で、福山雅治以外演じることはできないと思う。髭面もスーツも似合ってカーセックスに興じる中年はこの人しかいない*3。そしてその静の新人(ルーキー)アシスタントは行川野火(なめかわのび)役は二階堂ふみ。「この仕事サイテーですね」って繰り返す序盤は静にいじめられるのを見てかわいいなぁなんて思っていたが、作中で立派になって……

週刊誌『SCOOP!』の編集者で静の元相棒の横川定子(よこかわさだこ)役は吉田羊。しっかりモノでこの作品で見ていて唯一安心するキャラクター。実は静とかなーり仲が良いです。そしてこれまた昔、静と組んでいた馬場ちゃん役は滝藤賢一。編集長の座をめぐって定子とはライバル。馬場ちゃん、本名の下の名前が一度も出てこない(と思う)けれど、いいキャラしてます。僕はすごく好きです。

静の古くからの友人の通称チャラ源はリリー・フランキー。この映画のキーマンのひとりです、が全くそうは見えません。それがリリー・フランキーなんだろうなぁ。

Summary

フリーカメラマン都城静は野球選手のスクープ写真を狙っていた。いまノリにノッているプロ野球選手が夜な夜なクラブで遊んでいることを突き止めていた。彼の目的はひとつ、週刊誌に載せる写真を撮ること、つまりスキャンダルの証拠写真を撮ること。

彼は客のフリをしてカウンターに席を陣取り、バッグに仕込んだカメラでまさに豪遊している姿を撮ろうとした瞬間、想定外の邪魔が入る。女がターゲットに向かって取材交渉を始めたのだ。「今オフなんだけど」と激高するターゲット、逃げる女。結局写真は撮り損ね不発だった。

店を出て隠れてた女を見つけ、事情を聞いてみると彼女は週刊誌『SCOOP!』から来た記者で、名前は行川野火。定子にカメラマンにつくように指示されたとのことだった。静が定子に事情を聞きにいくと、定子の目的は行川野火の育成だった。そして教育を静にやって欲しいと。静は最初は拒否するも、金を理由に承諾することになる。

かくして、中年パパラッチ静と新人記者である行川野火のコンビが生まれ、スクープを探しに夜の街へ繰り出した……

Impressions

エロい中年のおっさんカメラマン

お姉さんこれ、Iカップ? それともJ?

L カップ♡ また後でね。

序盤からだいたいすべての会話が下ネタか野球のたとえなんじゃないかというレベルでだいたいずっと下ネタを言っている*4。そしてそこに居るのは福山雅治なんだけど、福山雅治だからこそ車でセックスに興じていても、ポールダンスやってるようなクラブで店の女の子のおっぱい揉んでも、編集部で風俗の割引券を貰っていても違和感がない。これはハマっているとしか言いようがない。

他の誰がこの役やっても、少なくとも笑えはしなかっただろうなと思う。

パパラッチ活動

序盤クドい演出を繰り返すのはわざとでしょう。大した見どころでもないのにスローモーション、大して状況は変わってないのに何度も流れる不安感を煽るクドいBGM、怒鳴り込むと過剰に静かになったことが強調される演出。これは観客にこの映画は「予告通りの映画だ」ということを知らしめるためにある。

予告通り、序盤はとにかく芸能ネタを追っかける。芸能人カップルのキス写真、政治家と巨乳アナウンサーのホテルでの密会などなど。そして自然な演技というよりもひたすらクドく、夜の東京で遊ぶ芸能人とそれを追うパパラッチの日常をこれでもかと教えてくれる。

この仕事は99%何も起きない。ほとんどは待ち時間だ。

夜遅いからもう帰りたいと愚痴る野火に対して、

堅気が寝てる間に俺達の食い扶持は転がってんだよ。

という静さんはサイテーな仕事をしているけど少しかっこよく見えてくる。

こうして最初は福山雅治にしか見えなかったイケメンカメラマンが、仕事を語る中年パパラッチとしての演技を見てるうちに次第に都城静にしか見えなくなってくる。こうして福山雅治都城静に見せていくことこそがこの序盤のパパラッチ活動の狙いなのだ。だが、あくまで芸能ネタを追っかけるのはこの映画の世界に引き込ませる手段でしかない。

刑事事件の被疑者の写真を載せるか?

定子が編集部の中で力を握り、刑事事件の被疑者の写真を警察の監視をかいくぐり無理くり撮影するというプランを持ち込む。これも映画の予告通りなのでここまでは書いていいだろう。定子の狙いは都城静を中年パパラッチからメジャーカメラマンへの復帰を促すこと。そのためにも芸能ネタだけでなく刑事事件のネタでも活躍して欲しいと思っている。

このシーンの演出もクドい。クドいんだけどこの映画のクライマックスは「ココ」だと予告で刷り込まれてしまっているから「まぁこんなもんか」と思ってしまう。適度に邪魔しない音楽と、必死の撮影強行はバカバカしいけど真剣にやっているので結構画になってる。ここでも出てくるスローモーションと結構テンプレであっさりうまくいくのが拍子抜けするんだけど。

このシーンに至る前に意外と示唆的なことを言い出す。テーマはずばり被疑者の写真を撮ることに果たして何の意味があるのか?だ。

野火は言い出す: 「この被疑者ムカつきます。人を 4 人も殺して、レイプまでして……ジャーナリズムとかよくわかんないけど腹が立ちます」と。馬場ちゃんは講釈する、「被疑者にも被害者にも人権があって、それを侵してまで報道することは……」しかし遮るように野火が言うのだ「そんな難しいことはわかんないって言ってるじゃないですか」と。

そう、よく考えてみなくてもわかるが普通は難しいことはわからないのである。

週刊誌を読むような人は(と大きい主語を書くのは好きじゃないが)、「よくわかんないけど腹が立つから法とかいう遠い世界じゃなくもっと卑近な方法で罰して欲しい」と願う人が居る。それが野火に代表される「逮捕されているとしてもなんかムカつく」という感情を持つような人だ。そして野火のように思っている読者というのは他にも居て、そうした人が週刊誌にはけ口を求めてやってくる。つまりより卑近な社会的制裁を求めている層だ。

不倫なんかでも刑事事件に発展するケースは少ないが、社会的制裁を受けて欲しいと願う人が居て糾弾される。そうした需要に週刊誌は応え続けている。この映画の編集部もその需要に答えていく方向で話がすすむ、だが決してその需要を肯定してはいない。馬場ちゃんが言うように、本来被疑者にも不倫をした人にも誰にデモ人権はありそれは守られるべきだからだ。どう思うかは観客の良心に任せ、スクープを見たい人が居る限り俺達は書く、と言うわけだ。

ジャーナリズムとはいえども結局は読者の需要に応えているだけ、結局今の形の芸能スクープも不倫の糾弾もゴシップ報道の何もかもは需要があるから存在するにすぎないのだ。

意外なところで社会風刺まで盛り込んできて、お前急に真面目になるんじゃないよと少し思った。

ラストまで

この節以後は本質的にネタバレしていますので、ご注意ください。

端的に言おう。僕はこの映画に不満が2つある。二階堂ふみは脱げないことと福山雅治は死ねないことだ。

『SCOOP!』の売上が35万部を突破した夜、静は野火を持ち帰ってエッチをするわけだが、そのシーン。

端的に言おう、「大人の事情」しか見えないのでいっそないほうが良い。大人の情事のシーンだってのに*5

まず二階堂ふみは最後まで下着姿だし、声はなし、なんかきれいな音楽が流れていて静がずっとキスしているんだけど、冗長にもほどがある。こんなに「早く終われ」以外の感想がないベッドシーン初めてみた。話の流れ的にエッチする必要はあったのかもしれないけど、こんなベッドシーンなら 5 秒で終わってくれたほうが良かったよ。

この映画が最後まで隠しているのはリリー・フランキー演じるチャラ源による殺人事件だ。彼は別れた妻との間の自分の娘に会いたいと行くが、元妻の今の男に色々言われ、最後にはチャラ源が銃殺し暴走する。チャラ源は銃を乱射し、元妻、元妻の交際相手、現場に最初に駆けつけた警官を銃殺する。そしてさらに娘を連れて街を徘徊するのだ。

このチャラ源という男に静は海よりも深い恩を感じているようで、静は現場へ向かいチャラ源を静止にさせようとする。しかし、彼は人質の彼の娘を警察に引き渡したあと、チャラ源からの凶弾を頭にうけ死んでしまう。その撃たれる瞬間に野火は現場でカメラを構えている。静は合図する:

野火、撮れ

かくして野火は銃殺の瞬間を撮影することに成功し、SCOOP!に殺人事件の瞬間として記事を書くのである。

なんだけど、撃たれた箇所を考えると、あの血の量で済むわけもなくあの顔の形状を保ってられるわけがない。僕は死に顔をそう何人も見ているわけじゃないし、銃で撃たれた人を見たことないけれど、血色が良すぎる。まるで「華麗なる一族」で死んだのに普通に顔に血が行っていた木村拓哉みたいな死に顔。そう、物語の中で静を殺すことはできても、「福山雅治が死ぬ」ことは許されないのが結局業界の事情。所詮アミューズもこの程度が限界かよバーカ*6てなわけで。

大人気ないこと書いたけど、でもこの展開には結構本気で驚いた。まさかこの映画で人が死ぬとも泣けるシーンがあるとも思わなかったし。

  • 馬場ちゃん

馬場ちゃんが静との過去を振り返るシーンがすごい泣けるんだよね。このシーン本当に好き。言ってることはソープで遊んだって話なんだけど、それを泣きながら笑い話として話すのが、葬式で思い出話しているうちに泣けてしまう親戚みたいでさ……妙にリアルだったんだよね。すごい好きなシーンだ。

  • 人が死ぬ瞬間を報道して良いものか

載せられるわけねぇんだよこんな写真!

この写真は都城静という人の尊厳を侵しているんだよ!

じゃあ、カメラ以外に何もなかった男の尊厳はどうなるんだい?

人が死ぬ瞬間の写真を掲載していいものか。需要がないから?コンプライアンス違反だから?とかそんな業界の事情やルールは関係ない、これは倫理的な問題だ。

人の死はよく報道されている。だが人が死んでいる姿を動画や写真で見ることはまずない。ではなぜか?

作中では写真を撮ること以外何もできなかった男の最後の写真として、カメラマンが死ぬ瞬間を掲載した。それがきっと彼の望みだとも。では故人の意思であればやっていいのか?

「絶対にこんな写真を使うんじゃない」と会議室で吠える馬場ちゃんの思いも、静が最後に残した写真を使いたい定子の思いも分かる。作中では後者に軍配があがるが、現実にはどうなっているだろうか、そしてそれは変わるべきだとあなたは思うだろうか。

人の死の写実的描写は果たして禁忌なのだろうか。

Other

本論とはあまり関係ないけど書きたいこと。

桃パイ

桃パイっていうのは作中に出てくる巨乳アナウンサーのおっぱいの(週刊誌とかでの)愛称で、まぁ現実にも過去に言われた「スイカップ」とかああ言う類のもの。

おっぱいが大きいから眼福という話を書きたいわけじゃなくて*7、中年のおっさんが「見えるか!?桃パイ見えるか!?桃パイサイコーッ!!」って叫びながら写真撮ってる姿がめちゃくちゃ笑えて面白い。マジでこれ本当に面白かった。

カーアクション

邦画のカーアクションとかカーチェイスで楽しめたことはあまりないんだけど、この映画のカーチェイスは楽しかった。路地を走ったり銃の代わりに花火撃って抵抗したり、めちゃくちゃ楽しい。これもおすすめのシーン。

タバコ

福山雅治のタバコを吸う演技が凄い。あと吸ってるタバコもすごく高そうで……銘柄は出てこないけれどコンビニで売ってるようなものではないと思う。さらにその吸い方、口の中に煙を充満させ「フー」と吐き出すその姿がなんともカッコイイ。タバコ吸ってるのを見てカッコイイと思わない時代だけど、その時代遅れ感もまた「中年パパラッチ」を表しているようでいい。

Conclusion

ごめん、あのネタ没った。

じゃあ文春にでも持ってくかな

勘弁してよ

笑いあり涙ありエロスありカーチェイスあり社会風刺ありなんでもありのこの1作。いろいろな側面が楽しめて情報量が多く僕は満足だった。業界の裏事情を一部を垣間見ると同時に業界の事情を感じさせる作品にもなってしまっているので、それさえなければ完璧だったのになーとも思うが。

かなりの秀作です。2時間のエンタテインメントですが、ボリューム満点で楽しめるいい映画です。

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*1:主題歌でGuitar弾いたりはしているみたいだけど。

*2:柴咲コウ演じる内海が好きだった。

*3:偏見にまみれた紹介になってしまった。

*4:ちょっと前にみた「ウルフ・オブ・ウォールストリート」を思い出したこの映画ではクスリは出てこないけれど。

*5:なんにも面白くないけど一度は言いたかった。今は反省している

*6:個人の駄々です。

*7:眼福なことは否定しない。