Something Poetical Private

私的で詩的な映画の感想を書いています。

ダゲレオタイプの女の感想: 幸せになりたい。

ダゲレオタイプの女を見た。監督は黒沢清だがフランス映画である。

www.bitters.co.jp

愛が幻影を見せ、

愛が悲劇を呼ぶ

僕は黒沢清の映画は「クリーピー 偽りの隣人」しか見ていない。これは面白い映画だった。「淵に立つ」と似ているが主題は全く違う映画で、僕はかなり楽しんだ。過去に書いたので、過去記事を貼っておくだけにしておく。

hikaru515.hatenablog.com

さて、この「ダゲレオタイプの女」、どことなく不思議な香りのする映画でとても見応えがある。まずダゲレオタイプという170年前からの伝統的な写真、パリから離れたフランスの郊外が舞台で、フランス語を喋っていることと昼間からワインを飲んでいること以外にはあまりフランスを感じない。古風な広い屋敷に温室がある。父は気難しい写真家で娘をモデルにしているときたらそれだけで怪しさ満点。

まーたマニアックな映画を見てひとりで盛り上がってと思われるかもですが、お前若いんだし「何者」とか見とけよとか思いますが*1、今回はさらっと書きます。

今回はネタバレなしです!

*1:ちなみに全く見る気はありません。

続きを読む

「淵に立つ」によせて。

最初に言い訳を書きます。この記事は本来別のブログで公開する予定の記事でした。単にこのブログに記事が少ないという個人的な事情とか、言い訳の部分を除き8,000字弱ものボリュームになったこととか、監督のトークショーに行ってしまったら「SNSなどでの口コミがかなり興行に影響するので宣伝お願いします」と頼まれてしまったこととかが影響して、先日「野暮だから何も書かない」と書きましたがこの場で公開することに決めました。

hikaru515.hatenadiary.jp

見る予定という方はこの記事よりも上の過去記事をご覧ください。この記事はかなり核心に近いことを書いているので、いわゆるネタバレといっても過言ではないと思います。

では、記事本文へどうぞ。長いので時間があるときにお読みください。

Introduction

映画、「淵に立つ」を見た、先週の土曜日のことだ。これを最初見た時、「あぁこれが僕が見たかった映画だ」と感じたし、その思いはあくる日も変わらず、たまらず監督のトークショーがあるというので直接お礼を言いたくて翌日行った。パンフレットを買ってサインも貰った。実は僕は少しミーハーだ。

普段僕は別のブログで、映画の感想とは名ばかりで自分なりの解説、宣伝を書いている。「僕が面白いと感じたものをみんなに共有したい」という思いからだ。でもこの「淵に立つ」を同じブログで扱う気にはとてもなれない。この映画に感じたことを正直に書けば、自分と自分の家族との関係性を如実に表現することになる。それはともすればプライベートな事実を書くよりもプライバシーの侵害につながるかもしれない。

僕はこの映画を素晴らしい映画だと思う。だが僕はこの映画を宣伝したいとはとても思えない。トークショーで広告のためにはSNSなどによる口コミが大切だと言われたが、さすがに身を削ってまでこの映画を宣伝する義理はないと正直思う。

でも今朝聞いた深田監督の言葉を思い返してみると、自分の思いと重なるところがある。

僕は映画を鏡のようなものだと思っている。自分が今までどう生きてきたのかを映すような鏡だ。映画が何かを表現しているのは当然のこととして、その映画について自分が何を考えるたのかがその人の本質を端的に表すと考えている。その映画を見たあと自分が何を語るのか、それが知りたくて僕は映画を見ている。逆に言うと自分が何を考えているのかは実はわからない*1

深田監督は本作「淵に立つ」を「100人が見たら100通りの意見が分かれる映画」と表現した。この物語をどう捉えるかが、その人の生き方や考え方を反映するのだと。僕は僕と言う一人の人間でしかないのだから、この映画のついて僕にしか書けないことがあるはずだ。そしてそれをきっちりと書くこと、それが僕がやりたいことであり、僕が映画を観続ける理由ではないのかと思う。

読者不在のこのブログで、迷い込んだあなたに語りかけてみる。あなたにとって「家族」とはなんですか?そして、あなたの「罪」はなんですか?

*1:こうした逆説的なことは、20世紀の無意識の発見による寄与が大きい。本作のパンフレットの監督自身のインタビューでこの逆説について述べ、監督自身の「フィクション観」にも影響を及ぼしている。

続きを読む

どこまでも、純粋に映画だった。「淵に立つ」

fuchi-movie.com

映画のひとつの側面としてエンタテインメント性がある。人を楽しませたり、笑わせたり、泣かせたり、クールだと思わせたりすること、それは映画に期待されるひとつの側面だ。そしてエンタテインメント性の担保のために装飾をする。それはときにファンタジー的世界観であったり、最後に謎が明かされるミステリィ的展開であったり、正義が悪を倒すカタルシスであったりする。「シン・ゴジラ」だったら、たとえそれまでの話を全くわからなくても最後のヤシオリ作戦は面白いと思えるように作られているし、「君の名は。」もハッピーエンドで終わる。スーパーマンは負けないし、スパイダーマンは世界を救う。

でもそうした装飾がなければ映画って作れないものなのか?

結論から申し上げよう、それは偽だ。反例はこの映画「淵に立つ」だ。

映画とは観客に映像を見せるということで、実は必ずしもエンタテインメントである必要はない。ここに映し出されているのは「日常」から切り取られた映像と、ほんの少しの「非日常」。そして底流に横たわっているのは、誰にも見えないけれど少しずつ、本当に少しずつ「日常」を蝕んだ「呪い」。

いつもだったら、もう少し僕は書きたいと思うだろう。それは例えば主演浅野忠信の演技、こだわりが見える「後ろ姿」、響く生活音、役者の顔が映えるかどうかは全く気にしていないカット、罪と罰、その事件で失ったもの得たもの、などなど。書けるし、普段なら僕は書く。

でもさ、この映画でそんなの全部野暮なんだよ。

全部、見ればいいから。僕がこの映画を面白いなんて声高に主張する必要はないし、感想を書きたいとも解説したいとも全く思わない。僕が言いたいことは、この映画はとても純粋で、だからこそとても映画になっていること。そして、僕が見たかった映画はこういうものだということ。

製作してくださった方、本当にありがとうございます。僕は大満足で劇場をあとにしました。

結果:

ま、そんなときもあるよね。

こんなに面白いならもう少し面白そうに予告してくれない? SCOOP!

最近もう面倒になってきたから全ての記事をネタバレありということにしようかって気持ちになってきた。

  • Introduction
  • Staff & Cast
  • Summary
  • Impressions
    • エロい中年のおっさんカメラマン
    • パパラッチ活動
    • 刑事事件の被疑者の写真を載せるか?
    • ラストまで
  • Other
    • 桃パイ
    • カーアクション
    • タバコ
  • Conclusion

Introduction

アミューズ、頼むからこの映画に妥協を許すんじゃない。一生恨むぞ。

この映画は凄い。予告見てたはずなんだけどすごくいい意味で裏切ってくる。笑いあり、なぜか涙あり、なぜかカーアクションもあり、さらには銃撃もあり社会風刺ありとなんでもありのエンタテインメント。クドい、ゲスい、エロい、サイテーサイアクな娯楽映画なのに、見終わったあと「いい映画だったな……」なんて錯覚してしまう不思議な魅力を持っているこの映画。脚本・監督大根仁の辣腕、主演福山雅治の大看板、主演を引き立てた助演の活躍、クドいほどに場面を煽ってくる音楽。いずれの要素もかなり評価が高い。

この映画を見る前に僕らが知っていたことは、実はすごく表面的な入り口に過ぎない。

俺達の仕事はゴキブリのその以下のドブネズミ以下なんだよ

と CM で言っていた。でもそのあとこう続く、

じゃあさ、なんでみんなそんなもん見たがんだよ?

と。予告でこの映画の入り口だけは見えている。でもあと一歩、そのさきの一歩を踏み込んでみると、この映画はずっと深い。エロさゲスさをカムフラージュにしているけれどずっと奥が深い作品。

2016年は邦画好調っていう主張を「テラフォーマーズ」を言い訳に否定し続けてきたけど、否定しきれないかもしれないな……

scoop-movie.jp

興行収入的には苦戦しているようだが、本当に面白かったのでこの記事でひとりでも見に行く人が増えることを僭越ながら祈っている。

続きを読む

10 月の見る予定の映画

ども, 515 ひかるです.

見た映画の感想を書くのも楽しいけれど, これから見る映画の話をするのも楽しいよねということで, 今回は今月に鑑賞する予定の映画を羅列します.

続きを読む

本気で恋をすること 「ある天文学者の恋文」

邦題が本当にアレだけど, 映画はすごくよかった.

Introduction

この映画, 一度だけ Twitter で話題にしたんですよね. #女性映画が日本に来るとこうなる というハッシュタグが流行った少しあとくらい時期でした.

この時点で見ると決めていたのですが, 風邪をひいてしまい一週間ずれ込みました. それでも見れてよかったです. これは本当にいい映画です. 邦題が「恋文」と余計な文脈を付していたり*1, 日本のポスターと現地のポスターで雰囲気がまるで違っていたりと色々ありまして, いろいろ言いたいことありますが, いかんせんこの映画の中身が非常に良いのでどうでもいいのでそんなくだらないことに時間を割きたくない. この文書をここまで読んだ人は, 早く見に行ってください. 法に触れない程度のルール違反は許すのでなんとしてでも見てください.

ちなみに原題は Correspondence, イタリア映画です. 本編英語で喋ってますけどね.

相変わらずネタバレなのかネタバレじゃないのかよくわからない感じで書いています. こういう映画はネタバレということもない気もしますが.

*1:そもそも手紙以外にも動画とかメールとか, しまいには天体物理学の講義まで届けているのにそれを恋文と訳す杜撰さがが本当に許せない.

続きを読む

何がどうしてこんなにも悲しいんだろう, 映画「ブエノスアイレス」

Introduction

風邪をひいていてしばらく更新が滞っていました. 病気だとそもそも映画を楽しもうという気にもならないので, あまり見てさえいなかったわけですが, そんな中で 2 本くらい見た中で, 「これについては一応書いたほうがいいかな……」なんて思ったのがこのブエノスアイレス.

なぜかわからないけれど, どうしようもなく悲しいお話.

続きを読む