読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Something Poetical Private

私的で詩的な映画の感想を書いています。

どこまでも、純粋に映画だった。「淵に立つ」

fuchi-movie.com

映画のひとつの側面としてエンタテインメント性がある。人を楽しませたり、笑わせたり、泣かせたり、クールだと思わせたりすること、それは映画に期待されるひとつの側面だ。そしてエンタテインメント性の担保のために装飾をする。それはときにファンタジー的世界観であったり、最後に謎が明かされるミステリィ的展開であったり、正義が悪を倒すカタルシスであったりする。「シン・ゴジラ」だったら、たとえそれまでの話を全くわからなくても最後のヤシオリ作戦は面白いと思えるように作られているし、「君の名は。」もハッピーエンドで終わる。スーパーマンは負けないし、スパイダーマンは世界を救う。

でもそうした装飾がなければ映画って作れないものなのか?

結論から申し上げよう、それは偽だ。反例はこの映画「淵に立つ」だ。

映画とは観客に映像を見せるということで、実は必ずしもエンタテインメントである必要はない。ここに映し出されているのは「日常」から切り取られた映像と、ほんの少しの「非日常」。そして底流に横たわっているのは、誰にも見えないけれど少しずつ、本当に少しずつ「日常」を蝕んだ「呪い」。

いつもだったら、もう少し僕は書きたいと思うだろう。それは例えば主演浅野忠信の演技、こだわりが見える「後ろ姿」、響く生活音、役者の顔が映えるかどうかは全く気にしていないカット、罪と罰、その事件で失ったもの得たもの、などなど。書けるし、普段なら僕は書く。

でもさ、この映画でそんなの全部野暮なんだよ。

全部、見ればいいから。僕がこの映画を面白いなんて声高に主張する必要はないし、感想を書きたいとも解説したいとも全く思わない。僕が言いたいことは、この映画はとても純粋で、だからこそとても映画になっていること。そして、僕が見たかった映画はこういうものだということ。

製作してくださった方、本当にありがとうございます。僕は大満足で劇場をあとにしました。

結果:

ま、そんなときもあるよね。

こんなに面白いならもう少し面白そうに予告してくれない? SCOOP!

最近もう面倒になってきたから全ての記事をネタバレありということにしようかって気持ちになってきた。

  • Introduction
  • Staff & Cast
  • Summary
  • Impressions
    • エロい中年のおっさんカメラマン
    • パパラッチ活動
    • 刑事事件の被疑者の写真を載せるか?
    • ラストまで
  • Other
    • 桃パイ
    • カーアクション
    • タバコ
  • Conclusion

Introduction

アミューズ、頼むからこの映画に妥協を許すんじゃない。一生恨むぞ。

この映画は凄い。予告見てたはずなんだけどすごくいい意味で裏切ってくる。笑いあり、なぜか涙あり、なぜかカーアクションもあり、さらには銃撃もあり社会風刺ありとなんでもありのエンタテインメント。クドい、ゲスい、エロい、サイテーサイアクな娯楽映画なのに、見終わったあと「いい映画だったな……」なんて錯覚してしまう不思議な魅力を持っているこの映画。脚本・監督大根仁の辣腕、主演福山雅治の大看板、主演を引き立てた助演の活躍、クドいほどに場面を煽ってくる音楽。いずれの要素もかなり評価が高い。

この映画を見る前に僕らが知っていたことは、実はすごく表面的な入り口に過ぎない。

俺達の仕事はゴキブリのその以下のドブネズミ以下なんだよ

と CM で言っていた。でもそのあとこう続く、

じゃあさ、なんでみんなそんなもん見たがんだよ?

と。予告でこの映画の入り口だけは見えている。でもあと一歩、そのさきの一歩を踏み込んでみると、この映画はずっと深い。エロさゲスさをカムフラージュにしているけれどずっと奥が深い作品。

2016年は邦画好調っていう主張を「テラフォーマーズ」を言い訳に否定し続けてきたけど、否定しきれないかもしれないな……

scoop-movie.jp

興行収入的には苦戦しているようだが、本当に面白かったのでこの記事でひとりでも見に行く人が増えることを僭越ながら祈っている。

続きを読む

10 月の見る予定の映画

ども, 515 ひかるです.

見た映画の感想を書くのも楽しいけれど, これから見る映画の話をするのも楽しいよねということで, 今回は今月に鑑賞する予定の映画を羅列します.

続きを読む

本気で恋をすること 「ある天文学者の恋文」

邦題が本当にアレだけど, 映画はすごくよかった.

Introduction

この映画, 一度だけ Twitter で話題にしたんですよね. #女性映画が日本に来るとこうなる というハッシュタグが流行った少しあとくらい時期でした.

この時点で見ると決めていたのですが, 風邪をひいてしまい一週間ずれ込みました. それでも見れてよかったです. これは本当にいい映画です. 邦題が「恋文」と余計な文脈を付していたり*1, 日本のポスターと現地のポスターで雰囲気がまるで違っていたりと色々ありまして, いろいろ言いたいことありますが, いかんせんこの映画の中身が非常に良いのでどうでもいいのでそんなくだらないことに時間を割きたくない. この文書をここまで読んだ人は, 早く見に行ってください. 法に触れない程度のルール違反は許すのでなんとしてでも見てください.

ちなみに原題は Correspondence, イタリア映画です. 本編英語で喋ってますけどね.

相変わらずネタバレなのかネタバレじゃないのかよくわからない感じで書いています. こういう映画はネタバレということもない気もしますが.

*1:そもそも手紙以外にも動画とかメールとか, しまいには天体物理学の講義まで届けているのにそれを恋文と訳す杜撰さがが本当に許せない.

続きを読む

何がどうしてこんなにも悲しいんだろう, 映画「ブエノスアイレス」

Introduction

風邪をひいていてしばらく更新が滞っていました. 病気だとそもそも映画を楽しもうという気にもならないので, あまり見てさえいなかったわけですが, そんな中で 2 本くらい見た中で, 「これについては一応書いたほうがいいかな……」なんて思ったのがこのブエノスアイレス.

なぜかわからないけれど, どうしようもなく悲しいお話.

続きを読む

罪からの解放 映画「聲の形」

私情を伴ったまえがき

思っていたより普遍的なテーマを扱う映画だったが, 誤解されやすい気もする.

この映画は間違いなく「贖罪」*1の映画だ. 過去に自分が犯した罪を認め, 反省し, その態度を示すこと. 誰にでもできそうで, 案外誰にもできないこと. 主人公の石田はそれをやってのけた. しかし彼にも偶然はある. たまたま西宮本人, 佐原, 上野といった面々それぞれが生きていること, そして長束と馬渕といった客観的な, そして石田に好意的な友人がいたこと……これらはすごく大きな要素だ. そして最後彼は罪から解放され, 前を向けるようになる. 人の顔を見られるようになる.

うらやましい. 私には彼が羨ましくてしょうがない. 謝る相手が居ること, 客観的に自分を見てくれる友人がいること, そして当事者の多くが不貞腐れないで自分なりに前を向いていること……私には彼が羨ましくてたまらない. 憎いとすら感じる. 私もそうありたかった, この映画を見てやっと気づけた. 私は余りにも愚かだったと.

やってしまってから罪の大きさに気づくことがある, 私もそうだった. しかし, 気づいた後何をするのかが重要でもある. 私は十分なことをしてやれただろうか. 聞きたくてももう聞けない. 私は謝りたいのにもう二度と謝れない. 彼は謝るべき対象を救いさえしたのだ. 彼に羨望の念を覚えて誰が私を咎められるだろう.

この映画で私は救われなかった. 私は自分の罪の大きさを自覚するだけだった. しかしこの映画, 紛れもなく私に突き刺さった. 私が数年前に導くべきだった答えを教えてくれた. 私はこの映画に多量の感謝と, 多少の罵声を送ろうと思う. それがいま, 私にできる数少ない罪を償う方法だからだ.

映画「聲の形」は紛れもなく罪を背負うものへ贈られる, 贖罪の物語である.

諸注意

さて, 私情を伴ったまえがきが重すぎたのでここからはかるーく行きましょう. 自分のせいなんですけどね. ここからは敬体で書きます. 本来ひとつの文書に常体と敬体が混じっていると気持ち悪いんですけど, 最近敬体じゃないと映画の感想が書けないのですよ. まえがきは書けるけど.

さて, まえがきを読んでわかったかたいるかもしれませんが, 今回あまりネタバレとか気にせず書いてしまったので, もし見たい人は読まないほうが無難かもしれません. かといって明示的にネタバレをしてはいないと思うのですが…….

*1:あるいは石田が過去の責任をとる話と言い換えてもよい.

続きを読む